繊細なクラッチワークを1日中続けるための握力と前腕の持久力
高速で走り続けるロードレースとは対照的に、歩くようなスピードや時には完全に停止した状態で岩場などの障害物を越えていくトライアル。この競技において命綱とも言えるのが、ミリ単位でエンジンの駆動力をコントロールする繊細な半クラッチの技術です。急な斜面や滑りやすい岩の上で、ライダーは常に指1本でクラッチレバーとブレーキレバーを微調整し続けます。
そのため、トライアルでは強靭な「握力」と、それを支える「前腕の筋肉」が非常に重要になります。重い車体をコントロールしながら、指先では極めて精密な操作を1日中繰り返すため、前腕の筋肉がパンパンに張ってしまう「腕上がり」という症状に悩まされることも少なくありません。普段からハンドグリップなどで握力を鍛えるだけでなく、前腕のストレッチを入念に行い、疲れにくいしなやかな筋肉を作ることが、トライアル上達への近道となります。
ロードレースのニーグリップとは異なる極限のバランスを保つ体幹
ロードレースでは太ももでタンクを強く挟み込むニーグリップで体を安定させますが、トライアルのバイクにはそもそも邪魔になるような大きなシートやタンクがありません。ライダーは車体をあえて体から離して傾けたり、左右に大きく振ったりしてバランスを取るため、ニーグリップに頼らない独特の乗り方が求められます。
そこで必要になるのが、足をつかずに静止状態(スタンディングスティル)をキープするための、深層筋肉である「インナーマッスル」を中心とした体幹の強さです。重力加速度(G)や遠心力に耐えるための筋力というよりは、不安定な足場でやじろべえのように微細な重心移動を行うための、柔らかく俊敏な筋肉の使い方が求められます。ヨガやピラティス、バランスボールを使ったトレーニングなど、体の軸を細かくコントロールする練習が、トライアルの美しいライディングに直結します。
巨大な障害物を飛び越えるための背筋と瞬発的な脚力
トライアルの大きな見せ場といえば、自分の背丈ほどもあるような巨大な岩や段差(ステアケース)を、まるで重力がないかのようにフワリと飛び越えるアクションです。これはバイクのエンジンの力だけで登っているわけではなく、サスペンションの反発力とライダー自身のダイナミックな体重移動を掛け合わせて生み出されています。
この瞬間に必要とされるのが、上半身でハンドルを強く引き寄せる「背筋」と、ステップを力強く踏み込んで車体を上に押し出す「瞬発的な脚力」です。持久力が必要なロードレースの筋肉の使い方とは異なり、トライアルではここぞという一瞬のタイミングで全身のバネを爆発させるような筋力が求められます。瞬発力を高めるためのジャンプ系のトレーニングや、背中全体を鍛えることで、重いバイクを自由自在に空中へ持ち上げるダイナミックな動きが可能になります。
まずはバランスボールで遊びながらインナーマッスルを鍛えたり、握力トレーニングを取り入れたりして、重力を味方につけるしなやかな体づくりから始めてみましょう。

